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日々の日記。ひっそりと静かに。

スケッチ

昔、好きだった人はいつか自分の著作が本屋さんの棚に並ぶことを夢見ていた。 研究を仕事にしていたからアカデミックな内容になるのだろうけど、彼自身が多分にポエティックな人だったので生まれればきっといい作品になると思っていた。 一般にアカデミック…

大阪ラバー

大阪は川の街だと思った。 堂島川と大川と、そのふたつの川を渡す石畳の橋から立体交差の幹線道路が遠くに見えた。 市役所や旧郵政局、日銀大阪支店あたりの小さなスポットだけを散歩する時間が残った。 幼い頃きた大阪は記憶のなかで、もっともっとザラザラ…

境界線の彼女

二年関わっていた仕事が三月に終わった。 まずまず忙しい仕事だったから終わるときには感慨深いかと思いきや、若い方たちから労いの花束をいただき送り出していただいても心はフラットなままだった。不思議だ。 昨年の他人の退職ではボロ泣きしていたのに。 …

本とラジオと、言葉

芸人コンビオードリーの、若林正恭さんの本を読んだ。 はじめて若林さんの文章を読んだが、リズムがとても心地よく楽しかった。 とくに好きだったのは若林さんがご自身の好きなものについて書く部分だ。 日本語ラップとプロレスと純文学がお好きなのだという…

「あなたは、話せばわかりあえると思ってる」

「あなたは、言葉を尽くして話しあえばわかりあえると思ってる」 と言われたことがある。 かなり前の出来事だが、それでもそのとき私はすでに30歳をこえていたと思う。 衝撃だった。 「言葉を尽くして話しあってもわからないことがあるのか」と。 誇張ではな…

冬の夕暮れの時計屋さん

1月の冷えた空気に夕暮れは美しく、寒さのなかのひとつひとつの色は鮮やかで、オレンジの夕陽が落ちるまでの紺と紫と橙の空気のなかに路面電車や地元銘菓の和菓子店、精肉屋、純喫茶、漢方薬局、美容院などが車道に面して並ぶ。その脇の通りを歩き、クルマに…

四年目の再開 -書くという作業-

ブログを書くのは四年ぶりだ。2018年の暮れ、二十年ほどつきあった恋人と別れた。しばらくぼんやりとすごしていたら、ふと、もう一度ブログを書きたくなった。「何かを手放すと、あいた空間に別の何かが入ってくる」みたいな言葉にはなんの意味もないと思っ…