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日々の日記。ひっそりと静かに。

入院記(退院します!) 続ヘルニア記

入院生活も明日までになった。長かった。

淡々と、ちょっと流れを書いてみる。

12月某日 手術の日
早朝の激痛により病院へ。検査の結果「巨大ヘルニア」と判明。ヘルニアがすでに右足と膀胱の神経を圧迫しつつあるため緊急手術となる。
※ 通常、排尿に支障が現れてから「48時間以内」に手術することが必須。これを超えた場合、膀胱機能障害となりまれには人工膀胱にならざるを得ない場合もある。私のケースは排尿困難が始まってからすでに24時間以上経過していたため「待ったなし」の手術となった。
※ ちなみに執刀医は
「僕もヘルニアは本来、患者さんがよほど望まない限りは手術はしない方針である。
 しかし今回は例外。しかも時間がない」
と説明してくれた。
14時に検査結果が揃い、17時手術開始。
19時30分 手術終了。
20時 麻酔から目が覚めたが3時間はICU待機とのことで、午前0時に術後病棟に移る。
このあたりはぼんやりしていてあまり覚えていない。

二日目 個室へ移動
背中の傷が痛くて目が覚めた。周囲が騒がしいので個室に移動する。
基本、ゆっくりの一日。ときどきナースがきて背中の傷をチェック。
聞くに、背中の傷は2センチ程度だが内部はより深く広く触っているらしい。
傷の治りは順調のようだが、大きなパッドを2枚貼った状態。痛い。
夕方、リハビリ担当PTが挨拶にきてくれた。
明日からリハ。

三日目 リハビリ開始
11時から初めてのリハビリ。
車椅子に乗って廊下を移動。ヘルニアの痛みにより数ヶ月間、ほぼ動かせていなかった右足(はよ病院いけよ)を中心に軽いストレッチから。
いきなり筋トレをするよりも、負荷の少ないストレッチを重ねて体全体の柔軟性を取り戻すのが先、とのこと。
車椅子に座った状態から膝を伸ばし、廊下と水平に足を上げるだけで足の背面の筋肉がひーーーっていう。
ひーーーーーーっっっ

四日目 歩行器に成長しました
11時からリハビリ。昨日と同じメニューをこなしたあと、車椅子から歩行器にステップアップ(アップ?)
歩行器でフロアを一周。長い…
午後からは階下のリハ室を訪れることに。歩行器での旅開始。

病院のご飯はまずまずだ(お世辞にもおいしいとはいえないけど、マズくもないです)


五日目 介助浴
歩行器に体を預けながら2階下のリハ室へ。さまざまな機械が待っていた。
長いこと痛みで破裂しそうだった右足、それをかばっていた左足。
どっちの足にも「ストレッチで柔軟に」という名の労いが必要らしい。
寝ておこなうストレッチは、仰向けになるとなにせ背中の傷が痛むのと、
それ以前に仰向けの状態で両足を真っ直ぐに伸ばせない。足の筋肉が長い期間の緊張と痛みで固まってしまっているかららしい。
ごめんよ、足。

手術後、はじめての入浴。介助の方に手伝ってもらってなんとかかんとか。
お風呂って結構体力使うんだな。


六日目 初・低血糖
引き続きリハ。担当PTが
「どうしましたか?調子悪い?」
と尋ねてくれた。確かに調子悪い。体が重く、だるく、とにかく眠い。冷や汗がでる。
いつものひととおりのメニューをこなして病棟に帰る途中、ナースステーションに寄って傷の痛みと「なんかぼーっとする」ことを訴えた。
担当ナースがきてくれてさまざま測ってみるにいわゆる「低血糖」とのこと。随時血糖が70程度(80以下は低血糖)になっていた模様。
低血糖は初めてだが、ふわふわするかと思えばすーーーっと血の気が引いて貧血?と感じてみたり、手の震え、体全体の重さなどよくわからない気持ち悪い症状が続く。
ナースと相談して自動販売機で「紅茶花伝」ミルクティ(280ml)をひとまず一気飲み。
15分くらいで血糖値は83に戻ってきた。
その後、ナースが去ってから低血糖について調べてみたけど、悪くすると昏睡にも至るようだ。
気をつけよう(どうやって気をつけたらいいのかわからないけど、極めてシンプルに考えれば、消費カロリー(糖分)が摂取を大幅に上回るとこーゆーことになるっぽいです)

七日目 
リハビリのメニュー(ヘルニア、私バージョン)
今日もリハビリ。
リハビリは毎日午前・午後、それぞれ40分〜1時間おこなう。昨日は低血糖でフラフラだったけど今日はOK。
日によって調子の良し悪しに大きな差がある。
こういう日ごとの変動は手術の時間や規模よりも、みえない部分での心身への侵襲性の深さ大きさによるものなんだろうと感じる。

ここ数日でリハ・メニューが決まってきた。
(以下、リハ・メニュー私バージョン)
・立位による下肢背筋のストレッチ(5分)
・マット上で膝を抱える(大腿からお尻の筋肉を伸ばす)(交互に5分)
・マットに仰向けに寝て大きなボールを足でころころ(大腿からお尻、背中の筋肉を伸ばす)(5分)
・平行棒のあいだを、平行棒につかまらずに歩く(歩き方にポイントがあって、一本橋を歩くように歩くのです。ムズい。体幹・左右のバランスを鍛える)(5往復)
・レッグカール(片足3キロ、5分)
・歩行器または歩行器なしで、リハ室内を3〜5周

ここまででだいたい40分〜1時間。疲れるけど、特に朝のリハビリはやったあと、体全体に一気に血流がめぐるのがよくわかる。
頭がすっきりする。
家に帰ってからも必ず続けようと決めた。


八日目 PTはすごい
リハビリをこなしつつ退院の話題が出るようになった。
「いつ退院したい?」と担当PTから聞かれたので「一刻も早く」と答えてみた。
「うーん。もすこし待って。まだちょい不安」との妥当な回答。
PT(理学療法士)という職種に患者としてかかるのははじめてだけど、みんな的確だなぁ


九日目 退院が決まる
リハビリが順調になってきた。日ごとの変動はあるものの、歩行器なしで歩けるようになったし、左右の足の痛み方(その日によってまったく異なる)やバランスの悪さもかなり整ってきた。
一日のリハビリを終えて夕方、執刀医(主治医)が部屋にのぞいてくれ
「退院していいよ。金曜日の午前?」
とのこと。
はいっ!いまでも!明日にでも!


十日目 最後の晩餐は読書
入院していちばんお世話になったのはどう考えても執刀医と、リハ担当の理学療法士(PT)だ。
最後のリハ。
私を担当してくれたPTはたぶん30歳くらいの物腰の柔らかく、的確で厳しさもある頼もしい青年だった。
的確に指示を出し、メニューを整え、私の疑問にきちんと答えてくれた。
他の患者さんに接する姿をみていても、彼の人に対する姿勢がよく伝わってきて
多少待ち時間が長くても、彼が他の患者さんに丁寧に助言する様をみている時間はそのまま大きな信頼感となった。
プロってすごい。
退院後、自宅でできるストレッチメニューをきちんと再確認して、すべてのリハビリ終了。ありがとう。

病院最後の夜は「読みかけていた本をどっぷりと読むことに集中するから、電話に出られないけどそーゆーことで」と夕方、母に連絡しておいて
退院したと同時に始まる日常(遅滞分あり)に備えることにする。
たぶんもう二度と、こんなにまとまった期間、日常から離れることはないだろう(病気や怪我ならなくてもいいんだけど)
その最後の夜は好きな作家の好きな一冊を。
そういえば今回も入院中、一度もテレビをつけなかった。

私は本があって低血糖にさえならなければ生きていける。