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日々の日記。ひっそりと静かに。

短文 画面越しの恋人

ときどきかつての恋人をインターネットの画像などでみかけることがある。
ストーカーではない。わざわざ探しているわけではない。
けれどネット内で自分の職業やそれ界隈のことを調べたりしているとおのずと、ときどき目にするのだ。
書くまでもないがそれが誰であるかとか知名度とかはなんの関係もない。
私にとってその人はただかつての恋人だ。
おそらく人生でただひとり、あきれるほど長い時間、心から大好きだったただひとりの。


ひさしぶりにふとパソコンの画面越しにあらわれたかつての恋人は心地よい顔をしていた。
これまでみたことのない、私の知らない、初めてみる写真だった。
心地よい顔をしていた。
かっこいいとか若々しいとかそういうことじゃなくて、すっきりと余分なものを取り除いたような、静かで涼しげな風が通るような。


よかったな、と思った。
幸福でよかったなと。

きっと。